大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 平成9年(ワ)10579号 判決 1999年6月24日

原告

甲野太郎

原告

甲野花子

右両名訴訟代理人弁護士

倉田卓次

佐々木一彦

松居英二

被告

乙川一郎

右訴訟代理人弁護士

吉岡桂輔

大塚正和

児玉晃一

同訴訟復代理人弁護士

村木政之

主文

一  被告は、原告甲野太郎に対し一億一九一九万二三六六円、原告甲野花子に対し一八七万円及びこれらに対する平成六年一〇月二四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らのその余の本件各請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを一〇分し、その六を被告の、その余を原告らの負担とする。

四  この判決は、原告らの勝訴の部分に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  原告らの請求

被告は、原告甲野太郎に対し一億九五〇八万三四七九円、原告甲野花子に対し三三〇万円及びこれらに対する平成六年一〇月二四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

一  本件は、原動機付自動二輪車を運転中、後記交通事故に遭い傷害を負った原告甲野太郎(以下「原告太郎」という。)及びその妻である原告甲野花子(以下「原告花子」という。)が、加害車の運転者である被告に対し、民法七〇九条に基づき、右事故によって原告らに生じた損害賠償を求めた事案である。

二  争いのない事実等(当事者間に争いのない事実、証拠〔甲第一ないし第四号証、第六号証、第一七号証〕及び弁論の全趣旨により認める。)

1  交通事故の発生(以下「本件事故」という。)

(一) 事故の日時 平成六年一〇月二四日午後八時一五分ころ

(二) 事故の場所 東京都墨田区向島一丁目五番六号先交差点(以下「本件交差点」という。)

(三) 被告車 普通乗用自動車(<ナンバー略>)(運転者・被告)

(四) 原告車 原動機付自動二輪車(<ナンバー略>)(運転者・原告太郎)

(五) 事故の態様 原告車が本件交差点を直進中、これに気付かなかった被告の運転する被告車が対向車線から右折してきたため、原告車と被告車とが衝突した(なお、事故の詳細については、後記のとおり当事者間に争いがある。)。これにより、原告太郎は、胸椎・胸髄損傷による両下肢の完全麻痺、両肺挫傷等の傷害を被り、平成七年一月三一日に症状固定の診断を受け、両下肢機能全廃、体幹機能障害等の後遺障害が残った。

2  原告太郎の治療状況等

原告は、本件事故による傷害等の治療のために、以下の通り入院した。

(一) 都立墨東病院

平成六年一〇月二四日から同七年一月三一日まで(一〇〇日)

(二) 東京リハビリテーション病院

平成七年一月三一日から同年五月一九日まで(一〇九日)

平成七年一一月一三日から同八年五月一五日まで(一八五日)

3  損害のてん補

原告太郎は、被告の自動車賠償責任保険から三〇〇〇万円、被告の任意保険会社から二五一五万八四三四円のてん補を受けた。

4  責任原因

被告は、本件事故につき前記1(五)の過失が認められるから、民法七〇九条に基づき、原告らに生じた損害を賠償すべき責任がある。

三  争点

1  本件事故の態様(過失相殺割合)

2  原告らの損害

四  争点1(本件事故の態様)

1  原告らの主張

原告太郎は、本件交差点をほぼ制限速度に従って走行していたところ、被告は、本件交差点を右折するに際し、対向車の有無及びその動静を注意すべき義務があったのにこれを怠ったのみならず、本件事故後、一旦停止することもなく、かえって急加速して逃走したもので、その態様も悪質である。このような事案にあっては、公平の見地から過失相殺を行うべきではない。

2  被告の主張

原告太郎は、本件事故当時、原告車の前照灯を点灯しておらず、また、原告太郎には前方不注視、ブレーキ操作の誤り等の過失があったか、原告車が制限速度をはるかに超える速度で進行していたから、原告側には少なくとも三割の過失がある。

なお、被告は、原告車に衝突したことを認識していなかったから、逃走したということはない。

五  争点2(原告らの損害)

1  原告らの主張

(一) 原告太郎の損害

(1) 治療費 六一〇万七六四〇円

(2) 入院付添費 六〇万円

(3) 入院雑費 一三万円

(4) 将来の通院交通費

五四〇万一二七〇円

原告太郎は、週二回の割合によるリハビリ治療及び二週間に一回の割合による泌尿器科・整形外科の検診を受けており(一週間当たり2.5回の割合で通院治療を行っている)、さらに将来三七年間(症状固定時満四一歳、平均余命三七年)にわたって右治療を受ける必要がある。右の通院一回当たりの交通費は二八二〇円であるから、一年間(一箇月を四週間とする)に要するライプニッツ方式により中間利息(年五分)を控除して算出した現価額(五六五万五〇七〇円)から、症状固定後の入院期間約九箇月分の二五万三八〇〇円を控除した頭書金額となる。

(5) 将来の付添看護費

三六五九万七五二八円

平均余命まで三七年間の近親者付添看護費として一日六〇〇〇円が相当であり、右額(一年分)をライプニッツ方式により中間利息(年五分)を控除して現価額を算出すると頭書金額となる。

(6) 車椅子関係費用

① 現在までに支出した費用

九二万六八九三円

② 将来の費用

四六三万四三一六円

原告太郎には、室内用、室外用及び予備の三台の車椅子が必要で、車椅子本体及びクッション(合計二八万七九七三円)は三年ごとの交換が必要であり、タイヤ(五〇〇〇円)は一年ごとの交換が必要であるから、平均余命までの三七年分の買換費用として、ライプニッツ方式により中間利息(年五分)を控除した現価の合計額(車椅子本体及びクッションは一四六万二九〇二円、タイヤは八万一八七〇円)の三台分である頭書金額が相当である。

(7) その他の装具費用

① 装具費 一万八九三四円

② 眼鏡代金 六万〇〇〇〇円

③ ベッドサイドレール等

三一万七六五二円

④ 将来の小水の管・袋

一一五万九二八六円

平均余命までの三七年間、一箇月五九〇〇円が必要であるから、三七年分をライプニッツ方式により中間利息(年五分)を控除して現価を算定した頭書金額が相当である。

(8) 自動車改造費

二〇九万一三七八円

原告太郎が使用できるように自動車を改造する費用は五二万八一二六円で、自動車の耐用年数ごとに買換えが必要であるから、将来部分について平均余命までの三七年分の買換費用として、右額をライプニッツ方式により中間利息(年五分)を控除して算定した現価の合計である頭書金額が必要である。

(9) 家屋改造費

一九〇九万〇七三三円

原告太郎は、家屋の改造費として既に一四三六万二七五一円を支払っている。また、車椅子のままで駐車場から家屋内へ移動するための昇降機の設置工事費用(一三六万五〇〇〇円)、入浴用リフト設置工事費用(三六二万三五〇〇円)が必要となるが(既払金を含め合計一九三五万一三〇一円)、そのうち頭書金額を請求する。

(10) 症状固定後の入院雑費

三八万七四〇〇円

前記第二の二2(二)の入院は医師の指示に基づくものであるから、入院中の雑費も損害であり、右期間中の雑費として一日一三〇〇円が相当であり、右入院期間のうち平成七年一月三一日を除いた二九七日分(実際には二九三日である)の頭書金額が相当である。

(11) 駐車場契約料

一〇万四八四〇円

原告太郎は、本件事故の後遺症により、従来契約していた駐車場を使用できなくなったため、車椅子で乗降できる駐車場を新たに契約しなければならなくなり、そのための費用として頭書金額を要した。

(12) 休業損害 二二〇万九〇四一円

原告太郎の事故前の年収は八〇六万三〇〇〇円であるから、休業期間一〇〇日分を日割計算した頭書金額が相当である。

(13) 後遺症逸失利益

一億一五九〇万五六二五円

原告太郎は、後遺障害等級一級に該当する後遺障害を被ったもので、事故当時に勤務していた会社を退職せざるを得なくなったことに照らしても、労働能力を一〇〇パーセント喪失している。原告太郎は事故当時四一歳であり、その後二六年間にわたり稼働が可能であったから、事故前の収入を基礎としてライプニッツ方式により中間利息(年五パーセント)を控除した頭書金額が相当である。

(14) 慰謝料 三七七〇万円

① 入院慰謝料 三九〇万円

② 後遺症慰謝料 三三八〇万円

(15) 弁護士費用 一七〇〇万円

(二) 原告花子の損害

(1) 慰謝料 三〇〇万円

(2) 弁護士費用 三〇万円

2  被告の主張

原告の主張のうち、(一)の(1)、(6)①、(7)、(12)のうち原告太郎の事故前の年収が八〇六万三〇〇〇円であることは認め、その余はすべて争う。

第三  当裁判所の判断

一  争点1(本件事故の態様)

1  本件交差点の状況等(当事者間に争いのない事実、証拠〔甲第一九号証の六ないし八〕及び弁論の全趣旨により認める。)

本件交差点は、水戸街道(以下「本件道路」という。)と区道との交差点で、信号機による交通整理が行われている。本件道路は、明治通り方面から本件交差点への道路幅員約一七メートル(そのうち、浅草通り方面へ向かう被告車進行方向の道路は、片側三車線、幅員約10.23メートルである。)、浅草通り方面から本件交差点への道路幅員約一八メートル(そのうち、明治通り方面へ向かう原告車進行方向の道路は、片側三車線、幅員約10.5メートルである。)で、両側に歩道(幅員約2.5メートル)が設置され、時速五〇キロメートルの速度制限がされている。本件道路と交差する区道は、幅員約16.55ないし16.6メートルで、両側に歩道(幅員約2.5メートル)が設定されている。

2  事故の態様

1の認定事実及び証拠(甲第一九号証の一ないし八、第二二号証の一、二、乙第一ないし第一一号証、第一三号証、第一四号証)並びに弁論の全趣旨を総合すると、(一) 被告車は、本件道路を明治通り方面から一番中央よりの車線を直進し、本件交差点で右折しようとして右折ゾーンで一旦待機し、その後右折を始めたこと、(二) 原告車は、本件道路を浅草通り方面から中央よりの車線を時速約五〇キロメートルで直進してきたこと、(三) その際、原告車の前照灯は灯火されていたこと、(四) 被告は、衝突するまで原告車に気付かなかったこと、以上の事実を認めることができる。

この点、被告は、① 原告車が前照灯を灯火しておらず、また、② 原告太郎には前方注意義務違反又はブレーキ操作の誤りがあったか、原告車が制限速度をはるかに超えた速度で直進してきたと主張する。

そして、被告は、右①について、原告車が前照灯を灯火していたとの訴外藍川幸也の供述(乙第二号証)は、事故現場から原告車を移動させるためバイクの左側を持ち二人がかりで前輪部分を持ち上げて運んだ時にスイッチに触れてオフになったのかもしれないとの藍川の供述が、前照灯のスイッチがハンドルの右側にあることと矛盾していること、及び、同人は警察と密接な関係にある警備員という職にあり、中立性と公平性に疑問が残ることなどから信用できず、逆に、他の目撃者等の供述から原告車の前照灯は灯火されていなかったことが推認できると主張する。しかし、藍川は、事故直後、原告車の前照灯がついていたことを詳細かつ具体的に供述しており、藍川が本件と何らの利害関係のない第三者であることに照らせばその供述の信用性は高いと考えられ、スイッチが切れた経緯の供述は推測を述べているに過ぎないから、これにより右供述の信用性が左右されるものではない。また、被告が指摘する訴外藤田勤及び同木ノ下美智男の各供述(乙第一号証、第四号証)は、原告車が無灯火であったことを推認させるものではなく、訴外柿崎妃史の原告車の前照灯が灯火されていなかった旨の供述(乙第五号証)も、その供述の全体を通してあいまいな部分が多く、柿崎自身も事故後二年も経過しているのでよく覚えていないとする部分も多いことに照らし、藍川の供述に比してその信用性が高いものとはいえない。したがって、被告の前記①の主張は、採用できない。

また、被告は、前記②について、原告車が時速約五〇キロメートルで走行していたならば事故前に停止することが可能であったとする意見書(乙第一四号証)の存在を指摘する。しかし、右意見書は、原告太郎の被告車の視認可能位置、制動方法等について、推測に基づく事実を前提として結論を導いていることが明らかであるから、被告の前記②の主張も、採用できない。

3  過失割合

被告は、本件交差点において待機後右折しようとしていたから、本件交差点を直進する車両等の走行を妨げないように安全確認をすべき義務があるところ、被告が右義務を怠ったことは前記認定のとおりであり、この点、被告に過失があることは明らかである。

また、原告太郎は、交差点を青信号に従って直進していたが、原告車は原動機付自動二輪車であるから、できる限り左側に寄って走行し、交差点を直進するに際しては右折待機車両等の動静にも注意を払ってできる限り安全な方法により走行すべき義務があるところ、原告太郎は、中央よりの車線を制限速度である時速約五〇キロメートルで漫然と走行していたから、右注意義務に違反した過失があるというべきである。

そして、右双方の過失を対比すると、原告太郎と被告の過失割合は、一五対八五とするのが相当である。この点、被告の本件事故後の態様等を理由に過失相殺を行うべきではないとの原告らの主張は採用できない。したがって、被告は、本件事故により原告らに生じた損害を、右の過失割合に基づいて賠償すべき責任がある。

二  争点2(原告らの損害)

1  原告太郎の損害

(一) 治療費(当事者間に争いがない。) 六一〇万七六四〇円

(二) 入院付添費 六〇万円

原告太郎の傷害の程度(前記第二の二1(五))等を考慮すると、入院中、近親者の付添が必要であったと認められ、近親者付添費用としては日額六〇〇〇円が相当であり、本件事故日から症状固定日までの一〇〇日間分は頭書金額となる。

(三) 入院雑費 一三万円

入院雑費は一日当たり一三〇〇円が相当であり、前記一〇〇日間の入院期間分は頭書金額となる。

(四)  将来の通院交通費

証拠(甲第一七号証、第二三号証)及び弁論の全趣旨によれば、原告太郎が将来にわたり通院治療等を行う必要のあることが認められる。しかし、将来の右治療の頻度及び必要な交通費等は明らかではないから、これを後記(八)の自動車改造費及び(一四)の慰謝料等において斟酌するのが相当であり、損害としては認められない。

(五) 将来の付添看護費

二四三九万八三五二円

証拠(甲第三号証、第一七号証、第二三号証)及び弁論の全趣旨によれば、原告太郎には前記のとおりの後遺障害が残り、現在は車椅子での移動と自動車の運転は可能であるものの、胸から下を動かすことができないため、車椅子の乗降や入浴等には介護が必要があり、また、身体の状態によっては車椅子から落下してしまう危険もあるため付添が必要であり、現に近親者(原告花子)による介護が行われていることなどが認められ、これによると、近親者介護費用としては、症状固定時の四一歳における平均余命期間の範囲内である三七年間分(日額四〇〇〇円)をライプニッツ方式(年五分)により中間利息を控除して現価を算定した頭書金額が相当である。

(六) 車椅子関係費用

(1) 現在までに支出した費用(当事者間に争いがない。)

九二万六八九三円

(2)  将来の費用

二二〇万四一七四円

証拠(甲第九号証、第一七号証、第二三号証)及び弁論の全趣旨によれば、原告太郎は本件事故による後遺障害のため移動には車椅子を使用しなければならなくなったこと、車椅子本体及びクッションの代金は二八万七九七三円であることなどが認められ、屋内用及び屋外用の二台につき四年に一回の買換えが必要であるから、平均余命の範囲内の三七年分の買換費用として、ライプニッツ方式により中間利息(年五分)を控除した現価の合計額(車椅子本体及びクッション一台分は一一〇万二〇八七円)の二台分である頭書金額が相当である。

(七) その他の装具費用(当事者間に争いがない。)

(1) 装具費 一万八九三四円

(2) 眼鏡代金 六万〇〇〇〇円

(3) ベッドサイドレール等

三一万七六五二円

(4) 将来の小水の管・袋

一一五万九二八六円

(八) 自動車改造費

一四〇万二一一一円

証拠(甲第九ないし第二一号証、第一七号証、第二三号証)によれば、原告太郎が使用できるように自動車の運転装置等を改造する費用として二四万五〇〇〇円を、褥瘡を防止するために車高を低くする費用等として二八万三一二六円を支払ったことが認められる(合計五二万八一二六円)。そうすると、今後も平均余命までの三七年間に新車を八年ごとに購入するものとして、右額をライプニッツ方式により中間利息(年五分)を控除した現価の合計である頭書金額を損害と認めるのが相当である。

(九) 家屋改造費

一〇一八万一六七五円

証拠(甲第五号証の一ないし九)によれば、原告太郎は家屋の改造費用として既に一四三六万二七五一円を支払ったことが認められる。前認定のとおり、原告太郎が車椅子での生活を余儀なくされる状態にあることに加え、既存家屋の状況、内部構造(甲第一三号証)等に照らせば、既存建物について、玄関スロープ、浴室、便所、エレベーターの設置等車椅子の使用を考慮した改造を行うことはやむを得ないものであるといえるが、床暖房の設置、部屋の拡張などの通常より程度の高い改造がされていること、存建物のほとんど全体にわたる本件改造が原告太郎のためだけにされたものとはいえないこと等からすると、右額の五割の七一八万一三七五円を本件事故による損害と認めるのが相当である。

また、原告太郎の前記後遺障害の程度及び付添に当たっている原告花子の負担を考慮すると、原告が主張する駐車場から家屋内への昇降機設置工事及び入浴用リフト設置工事が必要である。そして、証拠(甲第一七号証、第二〇号証の一ないし三、第二三号証)によれば、右各工事が将来行われる予定であること、各工事の見積額は、昇降機設置工事が一三六万五〇〇〇円、入浴用リフト設置工事が三六二万三五五〇円であることが認められ、これらを考慮すると、このうちの三〇〇万円を損害と認めるのが相当である。

そうすると、既払額の五割に相当する七一八万一三七五円と将来分の三〇〇万円の合計である頭書金額となる。

(一〇) 症状固定後の入院雑費

三八万〇九〇〇円

証拠(甲第六号証、第一七号証、第二三号証)によれば、前記第二の二2(二)の入院は、医師の指示に基づき行われた治療であることが認められるから、右入院に際して必要な雑費も本件事故と相当因果関係のある損害ということができる。入院雑費は一日当たり一三〇〇円が相当であり、入院期間のうち平成七年一月三一日を除いた二九三日分は、頭書金額となる。

(一一) 駐車場契約料

一〇万四八四〇円

証拠(甲第九号証)及び弁論の全趣旨によれば、原告太郎が本件事故の後遺症により、車椅子で乗降できる駐車場の新規契約が必要となり、そのための費用として頭書金額を支払ったことが認められるから、右は本件事故による損害ということができる。

(一二)  休業損害

二二〇万九〇四一円

原告太郎の事故前の年収は八〇六万三〇〇〇円であるから(当事者間に争いがない。)、右収入を損害算定の基礎とするのが相当である。なお、被告は、月額四万五〇〇〇円は役員報酬として支給されており、労働の対価ではないから基礎収入に加えるべきではないと主張する。しかし、証拠(甲第八号証、第一七号証、第二三号証)及び弁論の全趣旨によれば、原告太郎は、勤務先の訴外株式会社△△の名目的取締役であったが、従業員として労働に従事していたこと、本件事故後右収入の全額が支給されていないことが認められ、役員報酬部分も労働の対価であったものということができるから、被告の右主張は採用できない。

そうすると、原告太郎の休業損害は、右年収額を基礎として休業期間一〇〇日分を日割計算した頭書金額が相当である。

(一三)  後遺症逸失利益

一億一五九〇万五六二五円

証拠(甲第一七号証、第二三号証)及び弁論の全趣旨によれば、原告太郎には前記認定のとおりの重度の後遺障害が残ったこと、事故当時勤務していた会社を退職せざるを得なくなったこと等が認められ、原告太郎は労働能力を一〇〇パーセント喪失したものということができる。原告太郎の逸失利益は、原告太郎が症状固定時四一歳で、その後二六年間にわたり稼働が可能であったといえるから、原告太郎の年齢等を考慮すると、右(一二)の事故前の年収を基礎としてライプニッツ方式により中間利息(年五分)を控除して現価を算定した頭書金額とするのが相当である。

(一四)  慰謝料 二九六〇万円

前記認定の原告太郎の受傷内容、入院期間、後遺障害の程度、本件事故の態様(被告は、本件事故の発生を認識していなかったと主張するが、証拠〔甲第一九号証の一ないし五、乙第二号証、第四、第五号証〕及び弁論の全趣旨によれば、被告が本件事故の発生を認識していたにもかかわらず、救護義務を尽くさずに事故現場を去ったことが認められる。)、その他本件に現れた事情を総合考慮すると、傷害慰謝料としては一六〇万円、後遺症慰謝料としては二八〇〇万円が相当である。

(一五) 小計

一億九五七〇万六八二三円

(一六) 過失相殺と既払金の控除

一億一一一九万二三六六円

前記認定の過失割合に従って、右の損害額から一割五分を減額すると、残額は一億六六三五万〇八〇〇円となり、前記争いのないてん補額(第二の二3、合計五五一五万八四三四円)を控除すると頭書金額となる。

(一七) 弁護士費用 八〇〇万円

原告太郎が本件訴訟の提起、遂行を原告ら代理人に委任したことは、当裁判所に顕著な事実であり、本件事案の内容、審理経過及び認容額等の諸事情にかんがみて、頭書金額とするのが相当である。

2  原告花子の損害

(一) 慰謝料 二〇〇万円

前記認定のとおり、本件事故の結果、原告太郎には極めて重度の後遺障害が残り、生涯にわたって不自由な生活を余儀なくされたもので、原告太郎の妻である原告花子の精神的苦痛は計り知れないものがあり、原告太郎の治療経過、後遺障害の内容及び程度、その他本件に現れた諸般の事業を考慮すると、原告花子の慰謝料としては頭書金額が相当である。

(二) 過失相殺 一七〇万円

前記認定の過失割合に従って、右の損害額から一割五分を減額すると、残額は頭書金額となる。

(三) 弁護士費用 一七万円

原告花子が本件訴訟の提起、遂行を原告ら代理人に委任したことは、当裁判所に顕著な事実であり、本件事案の内容、審理経過及び認容額等の諸事情にかんがみて、頭書金額とするのが相当である。

3  総計

(一) 原告太郎

一億一九一九万二三六六円

(二) 原告花子 一八七万円

三  結論

よって、原告らの本件各請求は、原告太郎の被告に対する一億一九一九万二三六六円、原告花子の被告に対する一八七万円及びこれらに対する本件事故日である平成六年一〇月二四日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法六一条、六四条、六五条を、仮執行の宣言につき同法二五九条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官井上繁規 裁判官馬場純夫 裁判官田原美奈子は、差支えにつき、署名押印することができない。裁判長裁判官井上繁規)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例